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女喰い
第6章 弥八郎
身の回りの世話や体調管理など、お美代の世話は産婆が事細かにやってくれた。
当然と言えば当然だが、その費用は彦兵衛が持つ。

しかし、お美代が長屋にやって来て10日目になるが、彦兵衛は一度も見舞いに来ない。

「あの旦那様はあれ以来姿を見せないね、ま、立場もあるだろうから……」

産婆は飯の支度をしながらぶつくさ言った。
彦兵衛は産婆の言った通りだったが、その代わり、五作は翌日には来ていた。
五作はお美代の事を聞き、すっ飛んでやって来たのだ。
お美代は五作の姿を見てホッとした。
五作は死んだ赤ん坊の事は『可哀想に』とひとこと言ったが、それよりもお美代の事を心配している。
コツコツ貯めた金を使い、野菜や魚など、ほぼ毎日食べ物を買ってきては産婆に渡す。
産婆は『こんなに沢山、悪いね』と言ったが、五作は『構わない、早く治るようにしてくれ』と頼んだ。
彦兵衛がお美代に無茶な事をして、それで赤子が産まれてしまった。
五作にもそれ位はわかる。
自分は力があるのに、お美代を守ってやる事が出来ない。
歯がゆくて悔しい気持ちになるのだった。

産婆は五作とお美代のやり取りを見て、2人が思い合った仲だと気取っていた。
聞かなくてもわかる。
この朴訥な若者はお美代の事を好いている。
お美代と同じで下働きをしている事も、身なりを見れば分かる。
産婆は2人を見て深いため息をついていた。





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