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不自由への招待
第1章

小柄で華奢な人だった。

赤毛とブロンドの中間のような色の髪は
カールがかったようにふわふわしていて
肩まで届く毛先はあちこちに跳ねていた。

整った顔立ちに浮かぶにこやかな笑顔。
女の人?いや…違う。目の前のこの人は
細めとはいえ筋張った体躯をしていたし
自らを「僕」と呼び名前も男性名だった。

「疲れたでしょう」

笑顔からの、労いの言葉。それらは
僕の緊張を僅かにだが緩めてくれた。

「さて、覚悟はできてるね」

──と思ったのは一瞬。彼はその笑顔で
あっさりと僕を現実に引き戻してくれた。

もちろん忘れてなんかない。僕は
借金のカタに連れてこられたこと。
その為にしなければならないこと。

逃げ出したい衝動を必死に抑え
僕は「はい」と小さく頷いた。

「うん、感心」
「!」

正面床に膝をついた彼は、あろうことか
僕の体を服の上から無遠慮にまさぐった。

「色々調べさせてもらうよ」

全身が強張る。調べる?──ああ。
きっとこのまま貞操を奪われるんだ。

怖い。怖いよ。父さん。…母さん!!
嫌だ。嫌だよ。帰りたい、帰りたい!

───ダメだ、ダメだよ。何言ってるの?
家族のために頑張るって決めたじゃないか

「──ん。色黒だし色々薄っぺらいけど」

しかし、だった。手は肌に触れることも
服を剥ぎとることもなく離れていった。

「器量よしさんだね」

そう言って彼は頭を撫でた。
ふわふわとした優しい力で。

「…あの…僕… …!」
「寝転んで」

翻弄されて混乱させられるなかそっと倒され
服がたくし上げられていく。…ああやっぱり。
今度こそ覚悟を決め両目をキュッと閉じた。

「…ん!」

素肌に伝わるひんやりとした感触。
そこに触れた柔らかな熱。…掌だ。

「…!」

頭を撫でた時よりもゆったりとした動き。
それは鎖骨から始まり、脇、胸、腹そして
下衣の中へと滑り込んでいく。

「やっ…」

反射的に抵抗しそうになる。だって
他人に触られたことなんてない場所。

避けたのはきっと本能的な恐怖のせい。
抗おうとする自分に抗い必死に耐えた。

「いい子だね」

気取った彼は僕を褒めた。

「そうやっていっぱい頑張ってきたんだね」

抵抗をやめたから?…違う。彼は僕の、深み。
『他人に触られたことのない部分』に触れた。

「周りのために、男の子のふりして」
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