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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第15章 自由
 気持ちが落ち着きをとりもどし、顔を覆っていた手をどけると、不思議そうにフィーネを見つめるアンジェラに向かって微笑んだ。

「お気遣い頂いてありがとうございます、アンジェラさん。でも私は、身を捧げた方に、あのような形で尽くすのが役目ですから。だからそのようなご心配は、必要ありません」

 フィーネにとっては、聖地で教えられ続けたごく当たり前の言葉だった。
 しかし彼女の言葉にアンジェラの瞳が一瞬見開かれ、みるみるうちに険しい表情へと変わった。 

「役目だなんて、フィーネ様……何をおっしゃってるのですか!」

 優しかったアンジェラの豹変に、フィーネの体がびくっと震えた。
 そんな主の反応に、アンジェラは慌てて表情を柔らかくすると、驚き不安な気持ちを抱えるフィーネの手を優しく握る。

 自分の気持ちを伝えるように、ゆっくりと手の甲を撫でながら。
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