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Q 強制受精で生まれる私
第9章 3.5度目
 お前はただの性処理道具だという失礼千万なことを言われて頭に来ない人は人間じゃない。人間である私はモノ扱いする外道の眉間目掛けて、胸ポケットにあるボールペンを投げつける。先生はそれを見切っていたかの様に、僅か数センチ頭をずらしただけで避ける。

 背後でプラスチックが四方に砕け散る軽い音が響くも、先生はそれを歯牙にもかけずこちらを見据えてくる。

「さて。今日の治療は昨日行ってしまいましたから中止します。いい加減体を休ませなければいけませんしね。」

「貴方に言われなくてもそのつもりよ!! 最初から受ける気なんかこれっぽっちも無いわ。」

 白衣を乱暴に脱ぎ捨て、きびすを返して診察室から…いや、この病院から出ようとする。一秒たりともこの男を視界に入れたくない。だというのに「お待ちください。まだお伝えすることが。」と呼び止める声が、呪いの言葉の様に私の足を逃すものかと離さない。

「何ですか!? まだ何かあるんですか!?」

「明日の仕事はお休みでいいですよ。昨日無断だったとはいえ出勤していますから、その代休です。ゆっくりとお休みになられて下さい。」

「そうですか。それはそれは貴方の顔を見なくて済むから嬉しい限りだわ。もういいでしょ、さよなら!!」

 まだ何か言いたそうな顔をしていたが聞く義理なんか万にひとつも無い。私はドアというドアにストレスを当たり散らしながらこの地獄から退散する。歯をくいしばり、地面を割るかのごとく踏み鳴らし、のどかな夕空にどれだけ吠えても、沸き上がる怒りが収まらない。

 私は何も悪くない。
 なのに何故こんな仕打ちを受けなければならないのか。
 一体この理不尽な運命はどこから来るのか。

 もはや何に対して憤怒しているのか分からなくなる程我を失いながらも、何もかもアイツのせいだと言い聞かせることで無事に帰路につくことができた。

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