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Q 強制受精で生まれる私
第14章 5...? 度目
 まさかとうとう夢にまで出てくるとは…と最初は驚きを隠せなかったけど、不思議と現実世界みたいな不気味さの色が無く、純度100%の爽やかさに溢れる好青年という印象が漂っている。顔もどことなく現実世界の先生よりも若く見える気がする。これは確かにイケメンと言っても過言ではないなと感心する

「いつもありがとう。こういう悩みを打ち明けられる人、あんまりいないからさ。私。」

「他の病院の先生の方がもっと良く診てくれると思うけどね。わざわざこんな遠い所まで来るの大変じゃないか?」

「他の先生にあまりベタベタ触られるのは、さすがに嫌なんだよね。まーくんなら見知った仲だから安心だし、友達価格で安くしてくれるからね。」

「ははっ…いつも御ひいき頂き、誠にありがとうございます。おかげさまで栄光の赤字ロードまっしぐらですよ。」

 麗しきイケメンと世にも醜い怪物は、室内に広がる穏やかな空気にお似合いな会話劇を私に披露する。ただ役者が役者だけに何一つ面白くなく、つまらなさを通り越して物を投げつけたくなる衝動に駆られる。男優にも多少苛立ちを覚えるが、何より女優のふりをする雌の獣の方だ。夢の中なのに声を聞くだけでも鳥肌が立ちそうな寒気が身体中にほとばしる。

「いつもまけてもらって本当にごめんね。ここ最近取り締まりが強化されているせいか、稼ぎが悪いんだ。」

「…稼ぎだけじゃなくて、質も悪くなっているようだね。化膿していなかったとはいえ真っ赤に腫れていたよ、君。今度はどんなクズに手を出したんだい?」

「何? また説教なんか始めるつもり? 医者の仕事じゃないでしょ…まぁ、でも今回の男はとにかく酷かったのは事実ね。 腕太いしボクシングやってるっていうから期待したのに、痛いだけでちょっとしか出ないし、見かけ倒しだったわ。」

 いつもは饒舌にしゃべる先生が影を潜める程に、包帯女はベラベラと下品な体験談を私達に聞かせてくる。この前誰だか分からない男とセックスしてよがっていたくせにと鼻で笑いそうになりながらも、この汚物と同じ様に私も少し前まで先生以外の男と交わってしまっていたことを思いだし、身の毛がよだつ。こんな奴と一緒だなんて、同族嫌悪も甚だしい。

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