パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第14章 5...? 度目

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。次の男で決めるから。次の人はね…まーくんも知るあのヤリチン男なんだ。」

「…誰だよソイツ? 俺にそんな下品な知り合いはいない。」

「知らない? あぁ、まーくんの大学で悪名高かっただけで直接話したことはないかもね。ほら、あの製薬会社に入社した女泣かせの…」

「製薬会社…もしかしてアイツか? ダメだ!! アイツはダメだ!! 何人もの女に暴力奮ってきた最低な奴だぞ!? そんな奴相手にして無事で済むはずがない!! 今度ばかりは止すんだ、ほとぎ!! せめてもう少しマシな男でー」

　一際甲高い乾いた音が狭い診察室に響き渡る。

　女の肩を掴んでいた先生の手が僅かに宙に浮かぶ。
　電光石火の平手打ちが繰り出されたことが、先生の頬の高さで静止する女の右手が物語っていた。

「いい加減にして。私が誰としようと関係ないでしょ。私はあなたとじゃ子供ができないから、別の人とするだけよ。もう別れたんだから彼氏面しないで。」

　お前とはもう何の関係も無いと言われた先生は、横に張り飛ばされた頭を戻すことなく静かに肩を震わす。そこに怒りの感情はなく、悲しいとかやるせないとかそういったネガティブな感情が前面に出ているように感じられる。そんな先生のことなどお構い無しに女は帰り支度を始める。

「暴力振るわれようが何されようが関係ないよ。私はただ妊娠させてくれる活きのいい精子が欲しいだけだし。何人もの女と寝る程性欲強いんでしょ? きっとまーくんの何倍も濃い精液を持っているに違いないもの。今度こそ絶対子供できるよ。」

　傷心の男にありとあらゆる刺激物を何の慈悲もなく塗りたくる女は、さながら人の皮を被る畜生だ。他人事とはいえ人間性の欠片も無い外道の振る舞いに激しい怒りを覚えるも、当の先生はここまで貶されても激昂する素振りを見せない。

　誰かを好きになるということは、人をここまで我慢強く狂わせてしまうのだろうか。
　好かれていると自覚している人間は、ここまで傍若無人な態度を取っても許されてしまうのか。

　あまりの理不尽さに納得いかないことばかりだけど、この世界の中ではいくら声を大にして叫ぼうと何も起こらない。やり場のない怒りはひたすら私を苛立たせる。