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Q 強制受精で生まれる私
第14章 5...? 度目
 …
 ……
 ………


 ふ。ふふ。ふふふ。


「あれから治療を重ねてさ。ある程度不動症も回復してきたんだ。まだ完璧とは言えないけど、君に相応しい男にはなれたはずだよ。俺は今度こそ、絶対に君を幸せにしてみせる。だからー」

「ぷっ!! ははっ!! あはははははっ!!」

 緊張の糸が突如プツリと切れて、盛大な笑い声が爆弾の様に弾け出す。今の告白も当然ながら、先生の狐に包まれた様な表情も笑いを誘い、腹部に爪を食い込ませても笑い声を抑えきれない。
 
「そ…そんなに、可笑しかったか?」

「だっ、だって!! 何を言い出すのかと思ったらっ!! そんなっ!! あはははは!! こんな時に告白だなんてっ!! あー!! ジョークにしては酷すぎますよ、『先生』!!」

「…せん…せい? 何だよ…その呼び方…違うだろ…まーくん、だろ?」

 笑い転げる私とは対称的に、先生の表情がみるみる内に陰りを帯びていく。あまりに予想外のことにタガが外れたのか、今までの嘘が台無しになる禁句を発してしまう。
 
 いや、違う。
 やっと声に出せるようになったんだ。

 もうこんな虚しい茶番劇はこりごりだと言わんばかりに、私はこの期を逃すまいと先生に畳み掛ける。

「まーくん? あぁ…そういえば先生の名前、麻良でしたっけ。麻婆豆腐のまだからまーくんですか。何か小学生じみたあだ名で、全く似合いませんよ。止めた方が身のためです。」

「…さっきから何、言ってるんだよ…ほとぎ…」

「それに誰です? その『ほとぎ』って人は。さっきから人の名前間違える上に連呼して、失礼極まりないですよ。あんなに犯してくれたくせにもう私の名前、忘れちゃったんですか?」


「…まさか…お前っ!!」

「…あぁ。そういえば、あの時の挨拶がまだでしたね。」


 今にも爆発しそうな怒りを露にする先生を前にして、私はずっと溜め込んでいた言葉で導火線に火をつける。


「おかえりって言ってくれましたよね? ただいまです、先生。浜園 『穂伽』はただいま戻りました。」

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