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Q 強制受精で生まれる私
第15章 6.0 度目
「せんせ!! ぜんぜぇえぇ!! ぎゅってしてぇえ!! わたしの名前呼んでぇ!! こわれる、ごわれぢゃうぅうぅ!! もっと、もっとこわしてぇえ!!」

「孕め…はらめ、『ほのか』!! 俺の子を宿して、抱き抱えながらこの世に生まれたことを後悔し続けろぉ!!」

 混濁する意識の中でさえ、私は私の名を呼んだその瞬間を逃さなかった。幻聴なんかじゃない。確かに彼は私の名前を叫んだ。あまりに予想外の出来事に情報過多になっていた脳がしばしの間クリアになり、彼の瞳の奥に映る私に似た誰かを視界に捉える。私の空似なんてあの女しかいない。今になってようやくその姿を現したのだ。

 『初めまして。そこにいたのね。』とガクガクと揺れる体で精一杯に笑顔を作って挨拶する。だというのに向こうはこちらの笑顔には応えず、ただ大きく眼を見開いて泣き晴らし、口元をパクパクさせながらしきりに首を左右に振り続けるだけだった。

 何か言っている。『お願い。止めて。消えたくない。』…? 思わず鼻で笑ってしまう。亡霊は成仏した方が楽になれるというのに、何故そこまでこの世に執着するのだろう。そもそもこれは私の身体だ。他人の身体を許可無く乗っ取っておいて、よくもまぁそんなことが言えたものだ。
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