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Q 強制受精で生まれる私
第3章 1.5度目
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 アパートは備品置き場として借りていると言っていた割りにはあまりに広く、綺麗な部屋だった。

 部屋の隅に僅かに精巧そうな機械や医療器具、医療用のベットが乱雑に置かれているだけで倉庫よりがらんどうと言う方が正しかった。

 先生は私に部屋の設備を一通り説明していく。この時ばかりは私も先生の言に耳を傾ける。正直な話、部屋を一目見た時悪くないなと思えたので、気分は少し晴れやかだったのもあると思う。これまた悪くない設備の説明に頷き返す様になっていた。

「…以上で説明は終わりです。では私はこれで帰りますので、後はご自由におくつろぎ下さい。」

 私は思わずえっ!! と声を漏らしてしまう。こいつのことだ。きっとこの部屋に連れ込んだ後、また私とことに及ぶのだろうと内心覚悟していたのだが、あっさり引くとは予想外だった。先生は不思議そうな顔をするが、直ぐ様いつもの表情に戻る。

「明日から当院で働いてもらいます。朝8時位にこちらまで迎えに行きますので、それまでに準備お願いします。」

 時計持ってないんですけど、と即座に反論すると先生は部屋の奥を指差した。振り向くとそこには今時誰が使っているのか怪しい程古い型の目覚まし時計が置かれていた。物置小屋にしてはやたら用意周到な気がする。

「分かりました。今日はもうあなたの顔は見たくないので、出てって下さい。」

 無理やり連れ込まれたとはいえ、家主に対して言う台詞ではなかったが、先生は顔色一つ崩さず、「それでは、また明日。おやすみなさい。」と言って出ていった。

 車のエンジン音が聞こえ遠ざかっていく。何はともあれ、これでようやく一安心できそうだ。
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