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Q 強制受精で生まれる私
第6章 2.5度目
「あれ、浜園さんじゃないですか!! おはようございます!!」

 耳をつんざく爽やかなその声に、私はピタリと止まり背筋が凍りつく。タッタッとリズミカルな足音が背後から近づいてくるのが聞こえる。ゆっくり振り返ると、スポーティーな格好をして汗を垂れ流している先生がはぁはぁと息を切らしながら、足を忙しなく交互に挙げている。

 いかにもジョギングしていましたみたいに振る舞っているが、偶然にしては出来すぎている。あんなに確認したのに、一体どこに隠れていたというのか。

「偶然ですね。どちらに行かれるのですか?」

「ちょ、ちょっと…散歩、に…」

「そうですか。いいですね、散歩。体を動かすことは大事ですよ。」

 やってしまった。散歩なのに走っているなんて不自然だ…いや、そもそも外に出ている時点で…目の前に街へと続く道が広がっている時点で、どう言い訳しようと無駄だろう。

 逃げようとした私を一体どうするつもりなのだろう。しばしの静寂が流れる中、私は先生の顔を見ることができず、呪いをかけられた様に微動だに出来ない。

「それなら、少し遠いですがあの見えている街まで行ってみたらどうですか? ここから片道30分程なんで、コースとしてはピッタリですよ。」

 予想していなかった返事に私は思わずえっ!! と声を漏らしてしまう。何を言っているのか分かっているの、この人…逃げようとしているのに、それを止めるどころか勧めてくるなんて、頭が狂っているとしか考えられない。

「…行っても、いいん、ですか…街へ…」

「うん? あ、いや。少し遠いですし、嫌なら別にいいんですが…」

 私は今きっと凄い顔をしているのだろう。先生はどこか申し訳なさそうな顔をして、目を反らしている。

 …そう。分かった。何を考えているつもりなのか知らないけど、あなたのアドバイス通りにしてあげる。その方がこっちも都合がいい。

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