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Q 強制受精で生まれる私
第7章 2.9度目
「申し訳ありません。まだここに来てから日が浅くて…」

「ピルだよ!? 避妊薬だよ!? あ、いや一応生理痛にも効くけど…嘘でしょ、そんなに可愛いのに誰ともヤったことないの?」

 信じられないとでも言いたげに、女の子は私が口を挟む隙も与えずにまくし立てる。やかましいなと思いつつ、可愛い娘から可愛いと褒められたのは嬉しかった。お陰で不愉快だった気持ちが少しだけ晴れる。

「そうなんですか…無知でごめんなさい。それにしても、そんなに凄い薬なのに驚くほど安いんですね。」

「ここの病院凄く安いんだよね。公言しないことを条件にどこよりも格安で出してくれるんだよ。他はどこも二千とか三千もするから、本当に助かるー」

 突如バンッという轟音が響き渡り、話に夢中になっていた私達は心臓がとび跳ねそうになる。音は先程と同じく先生の方から出ており、机に置いてある分厚い本をわざと落としたようだった。

「あぁ、申し訳ありません。整理していたら誤って落としてしまいました。さて、お楽しみ所申し訳ありませんが閉院のお時間ですので、そろそろお帰り頂けないでしょうか?」

 先生は語尾を濁さずにはっきりと女の子に帰ってくれと言い、わざわざ診察室のドアまで開けて帰りを促す。これ以上この娘に喋られるのは不都合なのだろう。

 このまま聞き出せばこの男の抑止力が得られるはずだが、相手は見境なしに襲いかかってくるレイプ魔だ。下手に引き留めたらこの子も何されるか分かったものじゃない。私は「体調が悪くなったらまたお越しください。」と当たり障りのない挨拶をその娘と交わす。
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