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Q 強制受精で生まれる私
第7章 2.9度目
「なっ!! 何するんですか!! あなたにはデリカシーの欠片も無いんですか!!」

「さて。一応お聞きしますけど、どうしてこちらに? 今日はお休みだと昨日から何度も伝えていたはずですが。」

「それはこっちのセリフです。今日は休みだと言ってたくせに、あれは何ですか? 女子高生と二人っきりで、しかも怪しい薬の取引までして。」

 ドスを効かせて怪訝な顔を見せる私と全く表情を崩さない先生。質問を質問で返ししばし沈黙の時間が流れた後、先生は「仕方ありませんね…」と言いながら自身の椅子に腰を掛け脚を組み始める。

「怪しいも何も、あれは正真正銘のピルですよ。私だけじゃなく他の婦人科だって出しているオーソドックスなやつです。」

「また嘘をつくんですか? 皆使っている薬ならあんなに安いはずがない。どうせあなたのことだから媚薬か危険な薬なんじゃないですか?」

 私は鬼の首を取ったかの様に先生を問い詰める。このやり取りだって隠したカメラにしっかり録画されている。ここで先生の弱みを掴めば、それを盾に私の身の安全が保証される。暴行を加えようものなら尚更訴訟できる物になるし、このチャンスを逃す訳にはいかない。

「はて、私が嘘をついたことが今までにありましたか? 先の患者さんの分で切らしてしまったのですが、あれは本当にただのピルですよ。ただ他の方々よりも安いルートで仕入れているだけです。」

「さっきの女の子とはどういう関係なんです? 随分親しげでしたけど、またお得意の『治療』をしていたんですよね?」

「彼女の場合は治療というより、ただピル欲しさに来ただけです。婦人科というのは不妊や望まない妊娠でお困りの方しか来ないという偏見が蔓延っていましてね。彼女の様な若い娘が来ると、他の患者さんが勝手に思い込んで冷たい視線を送るというのが度々あるんですよ。だからこうして病院が休みの日限定で、彼女達のために開けている訳です。こうすれば人目なんか気になりませんからね。」

 この男の素性を知らなければ、いかにも医者の鏡に見える行いに思える。だけど慈善溢れるその行いの裏には、私みたいにこいつの好き者にされている女が存在するのだ。真っ当に思えるその行為も、何か絶対裏があるはずだ。そうに違いない。
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