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第9章 3.5度目

｢なによ。勝手に終わらせて…後戯のひとつも無いわけ?｣

　不満をたっぷりと込めた音声が白線女から聞こえてくる。男の方もうんざりしている様な溜め息を漏らし、ペットボトルの水を一気に飲み干す。その態度からしてあまり仲が良いようには見えない。

｢しょうがないだろ。今日仕事が忙しくて疲れているんだ。毎日してやっているんだから文句言うなって。百戦錬磨のお嬢様ならこれ位で目くじらを立てること無いだろう?｣

｢その言い方やめてほしいんだけど。まるで痴女みたいじゃない、私。｣

　違わねぇだろとぼやきながら男はクローゼットからバスタオルを一枚取り出してその場を後にしようとする。それをちょっと待ってよと叫んだ白線女が起き上がって静止する。

｢なんだよホントにさぁ。何なんだよ。シャワーのひとつ位浴びたっていいじゃんかよ。｣

｢まさかあれで終わりのつもり!? たった一回出しただけじゃない!! 女泣かせって聞いたからカラダ許したのに話が違う!!｣

｢うっるせぇなぁー!! 望み通り中に出してやっただろ!! 何がそんなに不満なんだよ!! 俺にも調子ってものがあんの。ビッチなほとぎ様と違って俺はそこまで飢えてないの!! 彼女やってんだったら少しは彼氏を立てろよ!!｣

　男がそう苛立つと白線女は頭を垂れて押し黙る。今『ほとぎ』って聞こえたような…この薄気味悪い女の名前のことだろうか? その名前どこかで聞いたことあるような気がする。

　どこだっただろうか。
　思い出せそうで、思い出せない…