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Q 強制受精で生まれる私
第9章 3.5度目
「取り消してよ。今の発言。」
 
 怒りを露にした声が白線女から響いてくる。何が気に食わなかったのか知らないけど、表情が一切読み取れなくても分かる程に相当お怒りのようだ。終始イライラしっぱなしで本当にヒステリックな女だなと思う。

「は? 別に俺悪いこと何ひとつ言ってねぇじゃん。何を撤回しろって言うんだよ。」

「名前よ。私の名前。心底嫌だからその名で呼ばないでって前に言ったじゃん。謝ってよ。」

「なんだよ、名前位どうだっていいじゃん。親からつけてもらった名前だろ? キラキラネームじゃあるまいし何をそんなにー」
「謝れって言ってるでしょ!!」

 急に激昂した女は男を力一杯突飛ばして押し倒す。男はしばし呆然とするも、この野郎と逆上して女の顔を甲高くひっぱたく。そのまま間髪入れずに二三発体を殴り付ける。奇声を発しながら女に暴力を振るう男のその姿を、私はただ黙って見ている。

 確かに今の男は怖いし何をしてもこれは夢なのだから無意味だという言い訳は分かる。だがそれでも助けようとするのが人情という物だろう。それなのに微動だにしないのは人の血が通っていないのか、はたまたこの女がこうされるのを望んでいたからなのか、私には分からなかった。

「ったくよぉ。生意気にも歯向かいやがって。調子こいてんじゃねえぞこのアマ!!」

 男はとどめとばかりにスタンドライトを掴んで女の頭上にある壁に向けて投げつける。単なる威嚇のつもりだったのだろうがタイミングが悪かった。猛スピードで迫り来るスタンドライトに気付かずよろよろと起き上がる女の目の前には鈍器がある。

 何かが潰れる様な鈍い音と同時に、私は目を力一杯瞑って反らし…

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