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Q 強制受精で生まれる私
第9章 3.5度目
「どうでもいいけど、もう出てこないでくれないかな。はっきり言って…ウザイ、というか…」

 思わず愚痴という一人言を漏らしてしまい、手で閉口する。あの女のことを見る度に、思い返す度に苛立ちが募る。これも共通している点だ。

 きぃきぃと喧しいというか生理的に受け付けられないというか、そもそも顔が見れない時点で受け入れも歩み寄りもできる訳がない。こっちはただでさえあんな状況でストレスが溜まりっぱなしなのだ。なんのつもりか知らないけど他人様が安らぐ時間に割り込まないで頂きたいものだ。

 のぼせてきたのか、出しっぱなしで湯気が多すぎるのか息苦しくなってきた。このままふやけて消えたい衝動に駆られるけど、泡になって消えるのにも多少の苦痛が伴うことを知った私は目の前の苦しみから逃れることを選んだ。安物であろうシャンプーの香りをさっさと身にまとっては洗い流して、霧一色の小部屋から出る。

 手を伸ばしかけてバスタオルも替えの服も持ってきてないことに気付き後悔する。替えの服は流石に無いとは思うけど、タオル位はあるだろう。前に女性の患者さんに被せたことがあるから、ここにあるのは確実だ。どれだけ呆けているんだ私はと自嘲しながら脱衣所のドアに手をかける。
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