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Q 強制受精で生まれる私
第9章 3.5度目
「あっ。あなたはあの時のっきゃあ!!」

「えっ!!」

 首まであと少しの所で体が固まってしまう。目の前の人物の驚く表情に凝視されて石化してしてしまう様は、かの西洋の化け物を彷彿とさせる。だけどその無邪気な魔眼を向けてくる女、いや女性は私の記憶にも残る人物だった。

「あ…あの…どうか、されましたか?」

「あ…いえ…し、失礼致しました。」

 私はそう平謝りして目の前の女性から目を背ける。名前こそ知らぬものの、この人相や立ち姿は忘れもしないあの患者…喚きながらも先生の検査を受け、媚薬に飲まれた私が劣情を覚えた、あの女性の物だった。あの男の策略だったとはいえ、あの時のことを思い出すと恥ずかしくて目を合わせられない。一体何の用でこの病院にまた来たのだろう?

「久しぶり…いえ。それほど日数は…経っていませんでしたね…今日はどうされたんですか?」

「えぇ。佐渡先生からこの前の検査の件でお話があるから来て欲しいと言われまして…予約入れないと駄目でしたか? 先生はいらないと仰っていましたけど…」

 女性はおずおずと私に尋ねてくる。どうも私が原因不明の動揺をしているため、失礼を働いたのではないかと手をもんでいるようだ。見知った人にそんな顔されたらとてもじゃないが人質になんかできない。次の機会にしろと私の中に眠る理性がペンを机に置かせる。

「…あぁ、そうでしたか。それではこちらに氏名の記入をお願いします。閉院間近ですし誰もいないので、すぐ呼ばれると思いますよ。」

 女性が書いた名前だけの受付用紙を受け取り、内線をかける。何コールかして電話を取ることなく切られる。これであの男の中では受理したことになるのだから適当もいいとこだ。向こうも暇なのかすぐに折り返しの内線コールが受話器にかかってくる。これも電話に出ずに即切りする。診察室に通して良いという合図を受け取った私は女性の名前を呼んで部屋に向かうように指示する。

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