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Q 強制受精で生まれる私
第9章 3.5度目
 閉じられていくドアの隙間から見える後ろ姿を見つめながら、私は一体彼女は何故呼ばれたのだろうと考えを張り巡らせる。常連さんは数多いがあの男から呼びかけられて来た患者さんは初めて見た。憶測ではあるけど、あいつに気に入られてしまったのだろうと思った。今度こそこの前のとは違う、本当の治療が始まるのだろう。

 私だけじゃ飽きたらず他の女にまで手を出す畜生の凶行を何としても阻止せねばと思い、いつでも突入できるようにドア手前で待機してそっと耳を傾ける。


ーーーーーーーーーー

「そんな!! 一体どういうことですか先生!?」

 始まった。しばらくの間何も音沙汰なくてやきもきしていたけど、ようやく本性を現したらしい。後はここで身を潜めて、毒牙をかけるその瞬間に突撃するだけだ。

 あの女性には申し訳ないけれど、私はこの救出劇に乗り出す前にちょっとした腹積もりを抱いていた。すぐには救出せずにすんでの所で助ける…そうすればこの人も目の前の先生とやらが如何に卑劣漢かが身に染みるだろう。彼女は必ずあの男を成敗するための協力者になってくれるはずだ。頼りになるかはさておき一人でも味方が手に入るのならば心強い。

 そういうことだから。
 さぁ、いつもみたいにその女を辱しめるんだ。
 私は指をドアの隙間に滑らせ、僅かにできた隙間から覗きを決め込み、室内に念を送る。

「落ち着いて。心中お察ししますがまずは落ち着いて下さい。今から説明いたしますから。」

「そんな落ち着けと言われても!! まさか私が癌なんて…悪い冗談はよして下さい!!」

 ガン!?
 よりによってそんな笑えないジョークを軽々しく吐くか普通!? ヤれる口実を作るにはいささか大袈裟すぎるし、そもそもそんな宣告されたらそれどころじゃない。一体何を考えているんだこの男は。頭でも打ったのか?
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