この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第2章 ごみ捨て場の神さまと金の薔薇
「幾度見てもきれいな紅だね。燃える炎か宝石か、真赤な薔薇でも食べたのかい?」
「どれも食べたことないです、これ、生まれつきなの」

 ふうん、とひとこと。

 わかったような、わからないような。どっちでもいいのかもしれない。きれいなものをきれいだと褒め称えるのに、大いなる理由など必要としないことを、陽色は雅弥とのやり取りで知っている。
 レエス編みの手袋の、ざらつく感触の向こうから、このひとの体温が伝わってきた。
 それでようやく、このひとが人間であるとわかる。糸を通しているからか、本当に薄すらとした、淡い温度。
 ふいに、西園寺は立ち上がり、陽色の顔を覗き込んでみせた。下から見上げると、やはりこのおひとは婀娜な顔をしている。視線が絡み合って、ようやく西園寺が、己の真赤なひとみを見つめていると気づいた。途端、陽色の頬が、ぽうと熱を持つ。

「あ、あんまり、覗きこまないでください、恥ずかしい」
「隠すことじゃないよ。君の個性だろう」

 至極簡単な調子でそう云って、そのおひとはさっさと立ち上がった。

「さて君、朝食はまだだね」
「うん」
「そしたら、そこで転がっている君、この子を少し借りるよ、ええと」

 そこで初めて、彼は陽色の顔をうかがうような仕草をした。陽色は滅多と積極的には名乗らぬ己の名前を、すかさずくちにした。

「ひいろ。陽色、いいます」
「そう、それじゃあ陽色、」

 私に付き合ってくれたまえよ。
 異国の王子のような優雅さで差し出された手を、陽色は迷わず取った。
/101ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ