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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第4章 柔らかな寝台と触れた熱
 西園寺は、華奢で小さな、とは云えど、己と同じような大きさのからだを抱き、そうっと頭を撫でてやる。伏せた睫毛のうつくしさ、頬のまるみのあいらしさ、お人形の中に混じっていても違和感がないほどきれいではあるが、していることは些か品がない。

 寝間着の真白い帯が、いつの間にかゆるんでいたらしい。
 襟の中に潜り込んだ人形が、確かめるようにすんと鼻を鳴らし、おそるおそる突起に舌を伸ばして、乳呑み児のように吸い付いてきた。どうしてこんなことを急にするのか。理解に苦しむ。

 ねえ、そこ、何も出ないよ。

 云おうとした時、はふ、甘い息があふれる。西園寺は急いでくちびるを閉じた。痛いような痒いような、不思議な感覚。先ほどまでとは、何か、違う。胸元から心の臓へと伝わり、血液に乗ってじんわりと広がってゆく。

「きもちい?」

 陽色は不意に顔を上げて、真赤なひとみで真直ぐに西園寺を射抜いた。

 薄紅色のくちびると、吸われ過ぎたのか腫れあがった部分の間に、とろりと唾液が糸を引く。細い指で、今度はそれを摘まんだり潰したり、何が何だかよくわからないが傍若無人にしていた。

「きもちいい、」
「そう、きもちいい?」

 尋ねてくる、ということは、この感覚は、気持ちいい、と云うのだろうか。

 ぴりぴり、電流を流されているような、不思議な感覚。
 確かに気持ち悪いわけではない。暫く考えたあと、西園寺は、うむ、と頷いた。ほんのちいさなことであっても、彼には憂いてほしくはなかったから。
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