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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第4章 柔らかな寝台と触れた熱
 陽色はぱあと大きな目をさらに大きく見開いて、西園寺にすり寄ってきた。

 にゃんにゃん、ごろごろ。仔猫よりは大きい。子どもにしても大きい。それなのに何故だか、甘やかしてあげたくなる。庇護欲をそそる、とはこういう事なのだろう。

 彼の肌は、つい数時間前までは地獄の底にあったのだとは信じがたいほど、柔らかい。鞣革のような、あまい触り心地をしている。

 その内、ぺろり、もう一度胸を舐められる。じわ、と頭の奥から、腹の内から、何かがあふれ出すような。鳥肌が立つのにも似た、あの感覚。

「は、それ、きもちい、」
「へ、ほんと、」

 教えてもらった言葉が、口をついて出た。陽色はふわふわと顔を綻ばせて、円を描くように西園寺の乳房を揺らす。そのうちどんどんからだが熱を持ってゆく。じわりと涙が浮かぶ。知らず知らずのうちに、脚がぴんと伸びていた。ぞくぞく、する。

「ふぁ、すごい、勃ってる」
「は……? た……?」
「うん、ここ、」

 おっきくなってるねぇ。ぷくぷくしてるねぇ。かわいい。さわってほしかったの。

 ぴん、と弾かれた瞬間、あ、と、普段の艶やかでよく響く己の声の面影すらないほど、か細く、弱々しい声が、くちびるから漏れた。

 滲む視界で確認すると、確かに、普段よりも隆起している、気がする。真白い中で、そこはやたらと赤く、膨らんでいた。それが無性に恥ずかしくて、きゅうとくちびるを噛んだ。
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