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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第5章 探偵少女と見世物劇団
「その恰好、ものすごく怪しいよ、明莉!」
「安心してください、理央さまもどこぞの頭のいかれた貴族に見えますから」
「私はいつも通りだよ!」

 片や白地に矢絣の藍染が鮮やかすぎる一重。
 片や血のような紅色の上着と同じ色のシルクハット。

 あまりにてんでばらばらすぎて、かえって仲がよさそうにも見えてくる。いや、仲がよさそうというよりは、『危険なお仲間』という方が近いやもしれぬけれども。

 一方陽色はと云えば、少しでも真赤なひとみの印象を隠すため、陽色は片目を薔薇のように布を幾枚も重ねた黒い眼帯で覆っている。それに合わせて、白い襯衣と赤い帽子も誂えてもらった。お人形の衣装用のレエスやリボンを、そのまま使って、ひと晩で縫われたそれは、元から人間のようには見えぬ顔を持つ陽色を、よりお人形らしくみせる。

 黙っていれば、病弱な、良いところの坊やに見えなくもない。実のところ、病弱なわけでも育ちがいいわけでも、正確な年齢こそ定かではないものの、坊やと呼ばれる歳ですらないわけであるが。

 怪しいふたりに挟まれて、陽色は大通りを歩いている。

 己が昨日まで勤めていたサアカスの、ビルヂングに向かって。帽子を目深に被るこの格好は、団員に正体を明かさぬためだ。

 昨夜西園寺が書き上げた二通の手紙の内、宛名のない方は露崎宛て、正確には警察署宛てのものであった。朝一番に新聞配達の少年にたっぷりの駄賃と共に預けられたそれは、無事に届けられ、こうして怪しい恰好の露崎が合流したというわけらしい。

「どうせわたしが出てくるんですから、宛名を書いておいてくださいよ」
「私としては君の顔には飽き飽きしているから、他の奴でも来ないかなと思っているのだけれどね」
「嘘。理央さま、知らないひととはろくに喋れないでしょう」
「はあ!? 昔と一緒にしないでくれたまえよ! 失礼だね!」

 陽色と同じくらい丈長いふたりが、ふたり揃って色っぽい声で、そこいらの餓鬼の喧嘩のようなやり取りをしている。

 西園寺の右手を両手で握って歩きながら、陽色は笑って良いものか悩んでくちびるを歪ませた。優しそうな墨色の髪の女はともかく、陽色のだいすきな彼女は真剣そのものだ。笑ったらきっと怒り出すであろう。
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