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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第5章 探偵少女と見世物劇団
「陽色!」
まやちゃん、と、陽色の薄いくちびるが象られる。
なるほど、彼が、陽色が寝台で語った『お姫さま』なのだ。想像していた通り、きれいな顔をしている。男であるとは思わなかったが、これならふたりは随分と親しかったに違いない。まやちゃん、と呼ばれた彼は、しかし、賢明なのか、臆病なものか、陽色の名を呼んだきりその場を動かない。
「まやちゃん、あの、あのねえ、」
「君、昨日の朝のひとよね」
陽色を飛び越え、真黒いひとみは西園寺を直接射抜いた。まるで華やかで、しなやかな獣だ。不用意なことは云わせない、という重みのある視線。
「いかにも、そうだけれど」
「陽色に変なこと吹きこんでいないわよね」
「いずれ君にもわかる」
まやちゃん、は瞼をぱちぱちさせ、それから、なによう、と憤慨した。何ともかわいらしい口調で、今度は陽色に怒って見せる。
「陽色、このひといけ好かないわ。ちょっと趣味悪いよ!」
「ううん、うん、」
泣き笑いのような、可笑しな表情を浮かべ、片目の男の子は幾度も頷いて見せた。うん、うん、でもね、
「とっても、とっても、きれいなの」
彼は面食らったような顔をして、しばらく押し黙った。
それから、そうね、と頷いた。
まやちゃん、と、陽色の薄いくちびるが象られる。
なるほど、彼が、陽色が寝台で語った『お姫さま』なのだ。想像していた通り、きれいな顔をしている。男であるとは思わなかったが、これならふたりは随分と親しかったに違いない。まやちゃん、と呼ばれた彼は、しかし、賢明なのか、臆病なものか、陽色の名を呼んだきりその場を動かない。
「まやちゃん、あの、あのねえ、」
「君、昨日の朝のひとよね」
陽色を飛び越え、真黒いひとみは西園寺を直接射抜いた。まるで華やかで、しなやかな獣だ。不用意なことは云わせない、という重みのある視線。
「いかにも、そうだけれど」
「陽色に変なこと吹きこんでいないわよね」
「いずれ君にもわかる」
まやちゃん、は瞼をぱちぱちさせ、それから、なによう、と憤慨した。何ともかわいらしい口調で、今度は陽色に怒って見せる。
「陽色、このひといけ好かないわ。ちょっと趣味悪いよ!」
「ううん、うん、」
泣き笑いのような、可笑しな表情を浮かべ、片目の男の子は幾度も頷いて見せた。うん、うん、でもね、
「とっても、とっても、きれいなの」
彼は面食らったような顔をして、しばらく押し黙った。
それから、そうね、と頷いた。