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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第5章 探偵少女と見世物劇団
ふたりは女学校の幼友達のように、白い手を振り合って別れた。名残惜しそうに、悲しそうに。それから、少しばかり、切ないような、表情をして。
雅也、という彼も、全てではないが、何とはなく、気づいているのだろう。
この、異質な色彩を持つうつくしい少女が、己等に何をもたらすのか。
ひとりは、舞台に上がるため、幕の内側へ。
ひとりは、このサアカスを潰すため、訪れるのは団長の元。
階段を上りながら、陽色はため息をつきつき嘆いた。おれ、まやちゃんの舞台を台無しにしちゃう。
「……あの子には、もっと相応しい舞台を用意するから、心配いらないよ」
「え、なに、どういうこと」
「君もそれを見てから、身の振り方を考えてはどうかね」
手を引かれながら云う台詞でもないなと西園寺は思うが、思うだけだ。くちに出すことはしない。せめてこの頼りない華奢な男の子の前では、格好付けたかった。
それに、君の生き方を決めるのは君であって、私ではないから。
思ったことがそのまま行動に出たらしい。無意識に足を止めていた。手を引く男の子はほんの少し首を回して、こちらを眺めたようだった。
「おれはね」
おれは、もう、決めてるの。
一歩、一歩、崩壊にからだを近付けながら、何故だか今までになく力強く陽色は云った。
雅也、という彼も、全てではないが、何とはなく、気づいているのだろう。
この、異質な色彩を持つうつくしい少女が、己等に何をもたらすのか。
ひとりは、舞台に上がるため、幕の内側へ。
ひとりは、このサアカスを潰すため、訪れるのは団長の元。
階段を上りながら、陽色はため息をつきつき嘆いた。おれ、まやちゃんの舞台を台無しにしちゃう。
「……あの子には、もっと相応しい舞台を用意するから、心配いらないよ」
「え、なに、どういうこと」
「君もそれを見てから、身の振り方を考えてはどうかね」
手を引かれながら云う台詞でもないなと西園寺は思うが、思うだけだ。くちに出すことはしない。せめてこの頼りない華奢な男の子の前では、格好付けたかった。
それに、君の生き方を決めるのは君であって、私ではないから。
思ったことがそのまま行動に出たらしい。無意識に足を止めていた。手を引く男の子はほんの少し首を回して、こちらを眺めたようだった。
「おれはね」
おれは、もう、決めてるの。
一歩、一歩、崩壊にからだを近付けながら、何故だか今までになく力強く陽色は云った。