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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第5章 探偵少女と見世物劇団
 その姿をはっきりと見た陽色は、まず雅弥に視線をやり、次いで西園寺を目に移して、最後にもう一度、男を見た。

「……ご主人さま、もうたくさん足蹴にしてたよね!」
「え、なんか、インモラルな話?」
「な、な、な、」

 なんなんだ貴様らは!

 唾を飛ばして、顔を真赤にして、酒と煙草で焼けた声を荒げ。叫ぶ姿を見て、西園寺はため息をついた。何だねそれは。安い芝居かね。

「仮にもサアカスを率いているくせに、台詞に品がなさすぎる。あの芸のない殺人鬼に何も云わぬあたり気づいてはいたが、やはり君に才能はないようだね」

 この状況でも、湧いて出るのは、そんな言葉であった。

 もう少しきれいな台詞であれば、賞賛に値するのだけれど。つまらないならば無駄に引き延ばす意味もなく、さっさと終わらせるに限ると判断し、西園寺は外套の内側から書類を数枚取り出す。

「突然で悪いけれど、このサアカスは私が買い取ったよ」
「は、」

 まあ、は、であろう。その反応は致し方がない。

 だが容赦はしてやらぬ。この男がくちをつぐんだままならば、少なくとも、あとひとりやふたりはがらんどうになっていただろう。気付いていたのに黙っていたことを不問にしてやるだけ、慈悲深いと思ってもらわなければならない。

 だが、今頃殺人鬼の女がつかまっていると知らぬ男からすれば、そのような理屈には至らない。贅を尽くしたからだからは想像もつかぬほどに、あっという間に距離を詰め、目の前に迫ってくる。さして身体能力が高いわけでもなく、特別体が大きいわけでもなく。もちろん権利書を持っていることもあるだろうが、西園寺を狙ったのは、そういう基準もあるのだろう。

(私なら、たとえば陽色や『まやちゃん』みたいな、この中でも強そうな相手は狙わない。一番弱そうなやつを狙うだろう。そうだね、私ならば、やりやすいだろうね、)

 胸倉を掴まれ、途端に息が苦しくなる。戦いは苦手だ。ずっと昔から。どういう因果か、勝てた試しがない。くちは回るはずなのに、ささいな口喧嘩でさえも。
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