この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第6章 心中サアカスと惑溺のグランギニョル
「おれ、ご主人さま、すき」
「……閨ではご主人さまというのはやめたまえよ」
「じゃあ、なんて呼べばいい」

 陽色は殊更必死な顔で聞いてきた。西園寺は静かに、しかしはっきりと、云う。リオ。リオ、と、呼びたまえ。

「理央?」
「違う、リオ」
「リオ」
「ふむ、上出来」

 きゅ。あまく締め付けられた心臓を誤魔化すように、居丈高に微笑む。

 リオは、名前を呼ぶことは好き勝手させていても、発音まで強制することは、ただの一度もなかった。結果として、リオのことを、正しくリオ、と呼べるのは、名を与えてくれた母と、兄姉のみ。のみ、だった。ここに、もうひとり、加わった。

 真黒い髪をゆっくりと撫でてやれば、陽色はあまえるようにすり寄ってきた。その顎をちょいと擦ると、手入れを怠った自動人形のような動きで、上を向く。リオは、彼のかたちのいいくちびるを、つうと撫でた。真赤なくちがぱっくりと開き、リオの人差し指を呑みこむ。

「……ふ、ぅ、」
「んん、」

 ぴちゃ、ぴちゃ。わずかな水音に、鼻から抜けるような、あまい息が混ざった。普段は低くて艶やかな声が、甲高く掠れたようになる。ざらついた舌が指をなぞるたび、リオのからだ、彼に出会うまでは使う気などなかった部分が、じくじく、疼いて、熱を持つ。歯列をなぞれば、つん、八重歯にぶつかった。

 つう。名残惜しそうに、くちびるがはなれた。唾液で濡れた指に嫌悪感は感じない。むしろ、それどころか。

「りお、きもち、?」

 昨晩と同じように、陽色はそう尋ねた。かけられた言葉はさしてかわらぬのに、くちは何の言葉も紡ぐことができず。ただ、ちいさく、頷く。

 訊いて、陽色はほんとうにうれしそうに笑った。

 よかったあ、素直に云えて、えらいねぇ。

 ゆったりとしたあどけない口調に、胎の奥が、きゅうと疼くのを感じた。
/101ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ