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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第2章 ごみ捨て場の神さまと金の薔薇
 二番目にがらんどうとなったのは、さる軍人の家のご令嬢。

 闊達な娘と社交界でも知られた彼女は、正に舞踏会からの帰り道、行方知れずとなった。そもそも従私をつけることを厭い、送迎をかって出た貴族の青年の言葉をすげなく断りひとりきりで馬車に乗ったのだ。

 あのお転婆のことだからひょいと帰ってくるに違いないと、当初は父親でさえもそう思っていた。

 ご令嬢を見つけたのは、酒屋の奉公人の少年だった。
 主人の使いの帰りに、緑色のドレスを真っ赤に染め、腹の中の何もかもをからっぽにして石畳に転がっている彼女と、その傍に佇んでいた紅い涙の道化師を同時に見た彼は、その後寝込んでしまったという。なんとも運がない。

 三人目は、これまた娼婦であった。ひとり目と違うのは、彼女は見世に雇われているのではなく、己の身ひとつで街角に立つ街娼であったこと。

 がらんどうの彼女は、朝になってようよう、洗濯物を干しに外に出てきた奥方によって見つけられた。殺してから時間が経っていたものか、道化師の姿は見なかったと警邏に尋ねられる前に奥方は云った。

 けれどもねえ、やっぱり、着物の下にはなあんにもなかったですよ。
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