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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第2章 ごみ捨て場の神さまと金の薔薇
「……というわけでな、三件も立て続けに似たような事件が起こったから、噂も随分広がっている」

 淡々と話し終え、藤堂は大きく息をついた。そのくちびるがちいさく動き、びっくりするほど低い声が漏れる。

 幾度話しても、胸の悪くなるような話だ。

 上官の呟きまで聞き取った露崎は、首を僅かに傾げて見せた。隣の金城も同じ向きに首を傾げているので、この疑問を己だけが抱いたのではないことがわかる。ならばと思うまま、上官に対して向き直った。

「あの、ひとついいですか」

 何でこの話を私たちの前でしたんです。

 露崎の言葉に、金城が深く頷いた。

 起きているのは殺人事件だ。しかも連続的な。詳細はわからぬが、藤堂の話しぶりから察するに犯人につながるような手掛かりらしい手掛かりも掴めていないのであろう。だがすでに、多くの人間が動員されていることは間違いない。仕事中にわざわざ呼び出して話を聞かされたということは、捜査する人員としてこの事件に関われということであろうが、今更己らふたりが関わったところでどうなるというものでもないと云うのに。

「私、自慢ではないですが捕り物以外はあまり役に立たないですよ」
「わたしも」

 ふたりが揃ってそう云うと、藤堂は俯き、腕を組んだ。このふたりが、女だと云うのに警邏として働くことができている理由はいろいろとあり、数年前の改革であるところも大きいが、単純に、彼女らがそれぞれ秀でたものを持っているからだ。

「貴様らはもう少し己の実力に自信を持ってもいいと思うが」

 だが、まあ、確かに署内で捜査に携わる人間はこれ以上増やしても仕方がない。

 磨き立てられた眼鏡を光らせ、藤堂が鷹揚な仕草で腕を組む。硝子の奥のひとみで何故か、じっと露崎を見つめてくる。
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