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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第6章 心中サアカスと惑溺のグランギニョル
 そろそろ窒息してしまう、と云うところを見計らって、陽色はゆっくりと頭を離し、顔を突き合わせた。
 陽色の彼女は、はふはふ、息を整えているらしい。すみれ色のひとみが、じんわりと水気を湛えていた。やはりこのおひとは、奇妙なまでに婀娜っぽい。皮膚が薄いからか、淡く薄紅色に染まった目尻を見て、納得したように首を縦に振る。

「君、こう云うことをするのなら、先に予告をしたまえよ」
「したら、なんでもして、いいの」
「…………」

 どうこたえるべきか考えあぐねる。いいよ、と云ったら、本当になんでもしそうだ。それは、少し怖い。

 考えているうちに、陽色は両足を寝台の両端にひっかけた。己がびっくりするほどはしたない恰好をしていることに、後戻りできない状況になってからようやく悟ったリオは、怒りか羞恥か頬を真赤に染め、思わず目蓋をきつく閉じた。

 先ほどのあまさが、一気によみがえる。

 ごくん。ひどく生々しい音が聞こえて、西園寺は反射的にそちらを向いた。陽色は、自らの口腔にたまった唾液を、どうやらのみくだしたようだった。

「ん、じゅんび、しな、きゃ」
「は、ぅ、」

 薄温かな指先が、粘膜をゆるゆると撫でる。どうやらこれはよほど余裕がないようだ。はふはふと聞こえてくる息遣いで、リオはそれを簡単に理解してしまう。あまりに聡明である故に、呼吸ひとつで、己の人形のこころもちを感じ取ってしまう。

 蕾を膣口を、数度も擦らぬうちに、先ほどの感覚で快楽に慣れたらしいからだは、とろり、とろり、蜜を零す。

 さして技巧があるわけでもなく、むしろ自ら望み好んでその部分に触れたのは初めてだと云うのに、甘美と歓喜とでひとみを蕩けさせているのは、リオにそちらの才能があるからなのか、それとも陽色の表情から感じ取れる熱にあてられたからなのか、或いは。
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