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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第6章 心中サアカスと惑溺のグランギニョル
 膝裏に柔く触れられて、陽色は泣きそうにからだを震わせた。なるほど。ぜんぶしりたい。無自覚に傲慢だ。

 もう少し端的に云うと、嫌がらせなのかと思うほどに、じれったい。くすぐったくて、むずがゆくて、無意識に腰が揺れてしまう。はやく、はやく、と健気に彼女に縋りついてしまう。

 でも、こんな愛し方しかできないのなら、陽色以外には、相手できないだろう。

 そう思えば、なんだか優越感すら感じてくる。

 そうして好き放題されてゆくうち、陽色の性は首を擡げる。思い出したようにリオがそこに触れ、そうして少し、口角を上げた。

「私に触れられて、きもちよかったの、」
「んん、きもちい、」
「そう」

 直に触れていないのに、こんなことになってしまうのだね。

 このままでも十分使い物になりそうな部分へ、リオはそうっと手を伸ばし、ぴとり、手の甲を押し付けてみる。

「熱いね、刺激を与えればいいとは知っているけれど、これ、君、どうすればきもちよくなるの?」

 おしえてくれたまえよ。ひとつのこらず。

 耳元に、たっぷりと息を含んだ問いかけ。陽色は、きゅう、目蓋を下ろした。

 あんまり、あおらないで。

 泣きごとのような響きに、リオは思わず手をとめ目を見張り、そうっと頭を撫でてやる。陽色は半泣きになりながら、そうっとリオの肩口にくちびるを寄せた。

「あんまり、されると。おれ、がまんできなくなるよう、」

 あんたのこと、泣かせたくないのに。
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