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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第3章 やきなおし
「んっうぐぶはあ」
「ねえ、何なの、その声は。君笑ったね、笑ったのだよね今!」
「……いやいやいや、笑わないほうが無理な注文でしょ」

 海色の切れ長のひとみを、子どもみたいにくるくる回して、従者の青年は複雑な笑い声を上げた。あまりに白くて殆ど青い、そのくせリオのそれより幾分も大きな両の手で、そうっと頬杖をついてみせる。

「お嬢さまからお呼び出しがかかったので、健気に出てきたのが僕なんですけど、もう帰っていいですか」
「君の咖喱が来てから五分と経っていないだろう!」
「ええ、もう嫌ですもん。先が読めますもん! 僕、聞きたくもないのろけ話を聞いて、お腹いっぱいなんですよう。咖喱あと二皿しか食べられないです」
「一皿片付けた後に云うことかい! というか五分あまりで一皿って、よく噛んでゆっくり食べたまえよ!」
「藤堂くんみたいなこと云うんですねえ」
「あれも大概大変そうだよね……」

 リオは片手を上げ、咖喱の追加を注文する。見た目の麗しさ儚さうつくしさに、全くそぐわない食の好みと消費量だ。見ているだけで腹がちくちくとするのはこちらの方だと云いたい。
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