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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第3章 やきなおし
 私は真剣なのだよ。

 こぼすと、青年、雨宮千遥、リオの大事な友人は、まるで気軽な調子で頷いて見せた。そんなことわかってますよう。

「だってお嬢さまが真剣じゃなかったことなんてないですもん。いっそ生きづらそうですよね!」
「……何だかそう云われると、私がいつも猪突猛進な鳥頭みたいだよね、」
「うっわ面倒くさ」

 そうなのだ。己が面倒くさいことなど重々わかっている。非常に面倒くさくて、複雑で、おまけにわがままでこだわりも強い。相手をするのは骨が折れることであろう。その骨折りをえんえん飽きず嫌がらず続けてくれた子だから、ほんの少しばかり今回のことが衝撃であっただけだ。

 そう、ほんの、少し。

「……何が悪かったのだと云うのかね…………!」
「わあ。ものすごい負のオーラですねえ。悪霊退散」
「私は悪霊じゃない!」
「睨まないでくださいよう」

 運ばれてきた咖喱をさっそくくちに入れながら、千遥はほのぼのとした微笑を浮かべている。彼のこういう飄々としたところが、そして幼い頃から共に居たという自覚は、腹立たしくも頼もしいので、あんなに手酷い裏切りを受けた後でなお、つい相談相手に選んでしまう。

 あらあら、紅茶が全然減ってないじゃあないですか。とりあえず飲んで深呼吸ですよ。

 細くて長い指が、安っぽいポットからちゃちなカップへ紅茶を注いだ。好意を無下にするのもよくない。両手でカップを持ち上げる。紅のぼやけた薔薇模様が、あの子のひとみを思い出させた。
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