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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第3章 やきなおし
陽色はため息をつき、おれこれでも真剣なんだよ、と文句をこぼした。
「うふ、わかっているわよ、そんなこと。陽色が真剣じゃないときなんて、あんまりないでしょう」
「……おれ、あんまり頭よくないから、冗談とかよくわからないの」
「もう、そういうことじゃないわよ」
いつも真剣なのは、全然悪いことじゃないじゃないんだから。
はい、と差し出された煎餅が、やや強引にくちびるを割った。控えめな塩味がくちの中で砕ける。
陽色とあのひとは、出会った瞬間から今に至るまで、決してあまく艶やかな関係ではなかったけれど、お互いほんとうにほんとうに真面目だった。真面目にしかできないところが、よく似ている。誤魔化したりはぐらかしたり、そういうのが愛だか恋だかの刺激という話もあれど、下手に器用でいらぬほどに不器用だから、それもできない。
陽色は、誰かと抱きあったり、頬をつつきあい、額を突き合わせてお喋りしたり、くちびるとくちびるを重ねたり、そういうことをしたためしが、微塵もなかった。何もかもがちぐはぐになってしまって、でもそれは屹度あのひとも同じだったのだ。
少しずつ勇気を持ち寄った寝台の上は、例えるならば夢のようだった。だから、その先にまだ夢のような事態が待ち受けているとは、思うまい。
「……きれいだったの、ほんとうに」
「見たことなかったのよねえ。ありそうなのに」
「おれは最初の日風呂に入れられた時、さんざんじっくり見られてるけど」
「……インモラルだわ……」
「ふああ呆れた顔しないで!」
するよ、させてよ、と云いながら、雅也は水羊羹をひときれふたきれみきれ、ぽんぽんくちに放り込んだ。ていうか、いいじゃん、そのまま云ってあげれば!
「そのまま」
「きれい! って云ってあげなさいよ」
「はずかしい!」
「胸やけがする!」
「なんで怒ってるの!?」
「怒ってないわよ!」
陽色、私のためにチョコレイトケエキを頼むのよ、私のためにね!
ぴしぴしと云われて、陽色は慌ててメニューを開いた。
「うふ、わかっているわよ、そんなこと。陽色が真剣じゃないときなんて、あんまりないでしょう」
「……おれ、あんまり頭よくないから、冗談とかよくわからないの」
「もう、そういうことじゃないわよ」
いつも真剣なのは、全然悪いことじゃないじゃないんだから。
はい、と差し出された煎餅が、やや強引にくちびるを割った。控えめな塩味がくちの中で砕ける。
陽色とあのひとは、出会った瞬間から今に至るまで、決してあまく艶やかな関係ではなかったけれど、お互いほんとうにほんとうに真面目だった。真面目にしかできないところが、よく似ている。誤魔化したりはぐらかしたり、そういうのが愛だか恋だかの刺激という話もあれど、下手に器用でいらぬほどに不器用だから、それもできない。
陽色は、誰かと抱きあったり、頬をつつきあい、額を突き合わせてお喋りしたり、くちびるとくちびるを重ねたり、そういうことをしたためしが、微塵もなかった。何もかもがちぐはぐになってしまって、でもそれは屹度あのひとも同じだったのだ。
少しずつ勇気を持ち寄った寝台の上は、例えるならば夢のようだった。だから、その先にまだ夢のような事態が待ち受けているとは、思うまい。
「……きれいだったの、ほんとうに」
「見たことなかったのよねえ。ありそうなのに」
「おれは最初の日風呂に入れられた時、さんざんじっくり見られてるけど」
「……インモラルだわ……」
「ふああ呆れた顔しないで!」
するよ、させてよ、と云いながら、雅也は水羊羹をひときれふたきれみきれ、ぽんぽんくちに放り込んだ。ていうか、いいじゃん、そのまま云ってあげれば!
「そのまま」
「きれい! って云ってあげなさいよ」
「はずかしい!」
「胸やけがする!」
「なんで怒ってるの!?」
「怒ってないわよ!」
陽色、私のためにチョコレイトケエキを頼むのよ、私のためにね!
ぴしぴしと云われて、陽色は慌ててメニューを開いた。