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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第4章 びやくしょや(なおくんとあかりちゃん)
 端的にまとめると、露崎にとって、この感覚は全くの未知のものであった。

(なんでしょ、体が熱い……頭がぼうっとします……)

 咳が出る気配はないが、風邪でも引いたのかもしれない。そんなことを考えながら、露崎は隣にある藤堂の顔を見上げた。

 どうやら『心中サアカス』で新たな公演がやっているそうですよ。私は行くことができないので、藤堂さんと見に行って、感想を教えてほしいです。明日は非番ですし、できれば今日中に。

 可愛い後輩にそんなことを云われて、一も二もなく頷いたのが数刻前の露崎であったが、風邪なのであれば、うつしてしまわないよう、一人でゆけばよかったかもしれない。__同じ部署で大抵仕事も一緒な金城が、一見さんお断りでもない大衆娯楽のサアカスに、何故ゆくことができないのか。と云うかそもそも非番だから今日中にの因果関係は何なのか。なんてことは、残念ながらそこまで回転の早くない露崎の頭には浮かばなかった__。

「直くん、私、熱があるかもしれません。羽織は脱いだのに、さっきから暑くて仕方ないです。明日出勤してなくても、たぶん家で寝込んでるだけなので、気にしないでください」
「……奇遇だな、俺も熱い」
「直くんもですか!? まさかもううつってたんです!? ごめんなさい!」

 春の穏やかな夜にはおおよそ相応しくない大声が響く。藤堂は少し眉をひそめて「静かに」と云い、露崎自身もぱっとくちびるをおさえた。こんな大声を出すつもりじゃあ、なかったんですけど。どうにもからだがおかしい。これは大事をとって早く布団に入らねばならぬ。
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