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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第4章 びやくしょや(なおくんとあかりちゃん)
 かくして辿り着いたのは、藤堂がひとりで暮らしている集合住宅__である__はずだった__。

「どうした、入らないのか」
「え、あ、はい……」

 さすがエリイト警察官。さすが藤堂家。ひくりと顔をひきつらせた露崎には、最早そうとしか云えなかった。

 露崎の住む長屋を横に五つは広げたような、縦に七つも積み上げたような、と云うか何かしらの庁舎であると云われても納得出来てしまいそうな、とにかくひとが普通に生活する家とは思えない場所である。エントランスでことづけをしている時にちらと聞いたが、どうやら藤堂の部屋は三階にあるらしい。三階って何です。

 階段は時計塔のものをもう少し大人しくしたような感じで、黒塗りの瀟洒な鉄でつくられている。先程から心臓がどくどくと煩く脈打っているが、果たしてこれが熱によるものなのか、それとも予想の五倍は大きく広い家に対してなのか分からない。

「ここだ」
「は、はい……」

 促されるままに辿り着いた扉の中に入ると、ひとり暮らしの部屋にしてはあまりに大きくて、広くて、殺風景な部屋が広がっていた。おそらく寝室に続いているのであろう扉があり、木造の机と椅子があり、小さいながらも厨がある。藤堂はそちらに向かうと、ふたつ、椀を取り出した。それから、床にある収納を開けて、中から淡い紅に色付いた液体をなみなみと湛えた水瓶を取り出す。この下には別の住人が暮らしているはずなのだが、どうなっているのだろう。
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