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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第4章 びやくしょや(なおくんとあかりちゃん)
「茶だ」
「ええ、こんな愛らしい色のお茶があるんですか? 発酵茶にしては淡すぎるでしょうし、薄めた葡萄酒のようにも見えるのですが」
「西園寺家が売り出す、新たな茶葉であるらしい。先日、試飲してほしいと、雨宮殿から頂いた」
「何が入ったらこのようなきれいな色になるのでしょうね」
「さあ。薔薇でないといいのだが」
特に金色の薔薇でないといい。
藤堂のことばに、露崎は黙って頷いた。彼が、そして雨宮が、昔露崎が愛していた金の薔薇を手折ったのだと、勘づかぬほどの愚かものではない。
供された薄紅色の茶に、藤堂がくちをつけたのを見てから、露崎もひとくち啜る。ずっと床の下で眠っていただけあって、ひんやりと冷たい。茶であるにしては酸味があって、ほのかに甘くて。果実水と云われた方が納得がゆきそうだ。
おいしい、と素直な感想を零すと、藤堂も頷いた。露崎は、この男が顔に似合わず珈琲が飲めないことを知っている。かと云って甘いものが好きなわけでもないが、少なくとも苦いだけの茶よりは幾分好みに合うだろう。
「ええ、こんな愛らしい色のお茶があるんですか? 発酵茶にしては淡すぎるでしょうし、薄めた葡萄酒のようにも見えるのですが」
「西園寺家が売り出す、新たな茶葉であるらしい。先日、試飲してほしいと、雨宮殿から頂いた」
「何が入ったらこのようなきれいな色になるのでしょうね」
「さあ。薔薇でないといいのだが」
特に金色の薔薇でないといい。
藤堂のことばに、露崎は黙って頷いた。彼が、そして雨宮が、昔露崎が愛していた金の薔薇を手折ったのだと、勘づかぬほどの愚かものではない。
供された薄紅色の茶に、藤堂がくちをつけたのを見てから、露崎もひとくち啜る。ずっと床の下で眠っていただけあって、ひんやりと冷たい。茶であるにしては酸味があって、ほのかに甘くて。果実水と云われた方が納得がゆきそうだ。
おいしい、と素直な感想を零すと、藤堂も頷いた。露崎は、この男が顔に似合わず珈琲が飲めないことを知っている。かと云って甘いものが好きなわけでもないが、少なくとも苦いだけの茶よりは幾分好みに合うだろう。