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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第4章 びやくしょや(なおくんとあかりちゃん)
 内臓を好き勝手掻き回されているらしいのに、欠片も不快感がない。むしろ、もっと、してほしい。熱いのに、この熱さは心地よい。

「ん、痛くない、なおく、もっと、」
「……っ、あかり、」

 直はきゅっと顔を顰めた。それから、咎めるような口調で、しかし普段金城葵とまとめて叱り飛ばすような厳しい声ではなく、湿っぽくて優しくて甘い声で囁く。

「今訊くのは狡いかもしれない。でも、どうしても知っておきたいんだ」

 君は俺が好きか?

 明莉は数度ゆっくりと瞬きをした後、閨にも春の夜の夢にも相応しくない朗らな笑顔を浮かべた。

「馬鹿ですねえ、」
「……すまない」
「ええ、本当に馬鹿。私が藤堂直を嫌うわけがないのに」

 直はぱっと顔を上げた。それから、意図を計りかねているとでも云うように目を細める。睨んでいると取られそうな顔ではあるが、明莉にとっては、ずっと昔から、それこそ最初に出会ったその時からよく知る、馴染みの顔だ。

「わたしが警察になろうって思った理由、話したことないですよね」
「足が速いからではないのか」
「結果的にそこは取り立てて頂きましたけど。女警邏が受け入れられるようになったのは、大改革__あの薔薇の花が手折られた日ですし」
「……」

 熱で頭はぼうっとしているはずなのに、くちびるはびっくりするほどよく回る。直が悲しそうな顔をするので、「貴方はそう云う顔をしていい立場の人間じゃないですよう」と指で眉間を撫でてやった。
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