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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第4章 びやくしょや(なおくんとあかりちゃん)
「実はその頃、家族からは結婚を勧められていて。まだあの頃はいくつか未婚の子息がいましたし。でも、嫌だったんです」
「……何故、」
「会う理由がなくなってしまうから」
嫁入りをしてしまったら、母さん経由で、たまに遊びに来てくれた直くんと、会う理由がなくなってしまうから。
それを恋と、ひとは云わない。恋と云うには、幼すぎる。親愛、友愛、に近しいものであろうが、閨教育も満足に施されていない少女が、知らないひとと結婚して直に会えなくなってしまうぐらいなら、彼のあとを追って警邏になろうと考えるのは、ある種当然であった。
直のひとみから、一粒、涙がこぼれた。それから、すまない、と云う。すまない、すまない、ごめんなさい、ゆるして、明莉、繰り返される涙声に、明莉はああもう、と云い返した。
「直くんは泣き虫さんですねえ」
よくわからないけれど、直くんの好きにしてください。わたし、貴方のためなら、なんでもできるし、できちゃったから。
ずうっとぼんやりしていて、自分のものでないようにすら思えていた感覚が、霧を払ったようにすうっと晴れる。目の前のくちびるをそうっと喰んで、その甘さに、ああ、わたしたち、ずっとくちづけをしていたんですね、とようやく気付いた。
「……何故、」
「会う理由がなくなってしまうから」
嫁入りをしてしまったら、母さん経由で、たまに遊びに来てくれた直くんと、会う理由がなくなってしまうから。
それを恋と、ひとは云わない。恋と云うには、幼すぎる。親愛、友愛、に近しいものであろうが、閨教育も満足に施されていない少女が、知らないひとと結婚して直に会えなくなってしまうぐらいなら、彼のあとを追って警邏になろうと考えるのは、ある種当然であった。
直のひとみから、一粒、涙がこぼれた。それから、すまない、と云う。すまない、すまない、ごめんなさい、ゆるして、明莉、繰り返される涙声に、明莉はああもう、と云い返した。
「直くんは泣き虫さんですねえ」
よくわからないけれど、直くんの好きにしてください。わたし、貴方のためなら、なんでもできるし、できちゃったから。
ずうっとぼんやりしていて、自分のものでないようにすら思えていた感覚が、霧を払ったようにすうっと晴れる。目の前のくちびるをそうっと喰んで、その甘さに、ああ、わたしたち、ずっとくちづけをしていたんですね、とようやく気付いた。