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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第6章 ありあ
裸のまま、絨毯の上に座り込む。見渡すと、周囲は布の山だった。濃い紅に黒い花模様の散ったのもある。灰色のレエスに、横縞のリボンはそうだ、帽子につけようと考えていたのだった。血の色をしたシルクはたっぷり布を寄せて、フリルブラウスに仕立てるつもりで。
あの人形の艶やかな黒髪には、紅が似合う。
どんな紅でも、あの黒は負けないから、安心だ。黒はすき。紅も。あちらの金色の糸は編んで、髪飾りにしたらどうだろう。人形の艶やかなひとみが映えるように。あれはどうしてあんなに艶やかなひとみをしているのだろう。あんなきれいな悪夢色を、いったいどこから拾ってきたのだろう。
とりとめもなく考えながら、リオはその長細い指で布を撫で、持ち上げ朝の淡い光にさらし、抱きしめたり頬ずりをする。
自然に歌がくちを突いて出る。空っぽの腹に響くアリア。異様に朗々とした声音で部屋を満たしてゆく。
「ご主人さま」
ふいに、掠れた声が聞こえた。途端、喉から歌が出なくなる。
声の方を振り仰ぐと、紅色のひとみがこちらを見ていた。寝台から零れる細く白い脚。まっすぐで骨張ったそれに、黒いレエスが絡みついている。痩せぎすの白いからだをゆらゆらと揺らしながら、彼はにっこり微笑む。
「こんなはやくから歌ってたら、また亡霊に間違えられちゃうよ」
少女人形じみた愛らしいみてくれに反して、甘く低い声が、戯れをくちにする。
「ああでも、もう今更かもねえ。でも、今度は時計塔の天辺でえっちなことしてるひとがいるって云われるかも」
「朝からよく喋る子だね」
「ご主人さまだって朝から歌ってるよ」
あの人形の艶やかな黒髪には、紅が似合う。
どんな紅でも、あの黒は負けないから、安心だ。黒はすき。紅も。あちらの金色の糸は編んで、髪飾りにしたらどうだろう。人形の艶やかなひとみが映えるように。あれはどうしてあんなに艶やかなひとみをしているのだろう。あんなきれいな悪夢色を、いったいどこから拾ってきたのだろう。
とりとめもなく考えながら、リオはその長細い指で布を撫で、持ち上げ朝の淡い光にさらし、抱きしめたり頬ずりをする。
自然に歌がくちを突いて出る。空っぽの腹に響くアリア。異様に朗々とした声音で部屋を満たしてゆく。
「ご主人さま」
ふいに、掠れた声が聞こえた。途端、喉から歌が出なくなる。
声の方を振り仰ぐと、紅色のひとみがこちらを見ていた。寝台から零れる細く白い脚。まっすぐで骨張ったそれに、黒いレエスが絡みついている。痩せぎすの白いからだをゆらゆらと揺らしながら、彼はにっこり微笑む。
「こんなはやくから歌ってたら、また亡霊に間違えられちゃうよ」
少女人形じみた愛らしいみてくれに反して、甘く低い声が、戯れをくちにする。
「ああでも、もう今更かもねえ。でも、今度は時計塔の天辺でえっちなことしてるひとがいるって云われるかも」
「朝からよく喋る子だね」
「ご主人さまだって朝から歌ってるよ」