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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第3章 やきなおし
 どんな衣服を見に纏っても完璧に見えるようにと、どちらかと云えば痩せ型になるように体型を保っているリオと、誰がどう見てもあからさまに百人が百人痩せっぽちと云うであろうこの子だから、ただでさえ大きめ寝台にはまだ余裕がある。

 真昼の内に調子に乗ってほんの少しだけ吹きかけておいた薔薇の香水が、リネンからほんの僅かに馨った。リオのあいらしいお人形は、なんか、いいにおいする、と舌足らずに囁く。

「……随分静かだね、普段はもうすこしぴいちくぱあちくうるさいくせに」
「ええと、そうだけど、」

 おっきい声出すと、なんか、雰囲気がさらさらーって消えてなくなる気がするの。

 変なところで勘のいい子は、ひそひそ、ふわふわと云い重ねる。もこもこの部屋着は、陽色のためにと、姉にプレゼントされたもの。華奢なからだがやわらかにふくらんで、ぬいぐるみみたい。姉は、屹度、おそらく、絶対に、リオが好みそうなものを完璧に把握していたに違いない。有難いは有難いけれど、猛烈な照れも込み上げてくる。

「あ、どうしたの、」

 真っ赤。

 細く冷たい指先が頬に触れる。長めに整えられた黒髪の隙間から、鮮やかな紅が覗いた。焔のように、ルビィのように、あるいは血のように艶やかな悪夢色。

 少し変わっていて、とびきり綺麗な男の子。

 思わずその細い首に腕を回して引き寄せる。手触りはふかふか。青白くとうめいな肌から、リオ選んだボディミルクの、あまい匂い。心臓の底がぎゅう、と引き絞られる。

 彼はくすくす笑いながら、リオの頬にくちびるを押しあててきた。嬉しそうにしている。よかった。嬉しいのは私だけじゃあない。
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