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あおい風 あかい風
第3章 まよい
 「キスだけで 我慢できればいいのに、と思うよ」
  「もう こわがらせたり 傷つけたり しないから」

 この腕の中から逃げ出した碧の後姿。あの痛いような喪失感。
 二度と いやだ。

 「今度の試合で 引退するんだ」
 えっ そんなこと。
 「県大会とかは?」
 「うん。夏まで走ってたら 受験に間に合わない。ただでさえ 引き離されているのに」
 「スポーツ推薦は?」
 「うん。やりたいことがあるから」
  いつの間にか 碧は 正座をして聞いていた。

 グラウンドから 太陽がなくなる。
 あの空に吸い込まれそうなジャンプが見れなくなる。
 そんなことはわかっていたけど 今 それを宣言するなんて。
 ぐっと 唇を結んで 涙をこらえた。

 「もう あんまり会えなくなる」
 「それで 焦ってた」
 「ひどいことして」
 
 またテレビから 大きな笑い声がする。
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