この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
あおい風 あかい風
第3章 まよい
家に入るとき 大輝が「ただいま」と言ったので 碧も「おじゃまします」と言った。
振り返った大輝が「だれもいないよ」と言う。どきり。また 緊張してしまう。
大輝が 居間の窓を開けると レースのカーテンが ふわりと風にゆらぐ。
「2階にいこっ」
大輝について2階に上がると
「兄貴の部屋にテレビがあるんだ。そこで いい?」
勝手がわからないので いいも悪いもない。
部屋に入るとき 「おじゃまします」と言うと
「兄貴は 社会人で 今は東京で一人暮らしをしてるから ここには めったに帰ってこないんだ」
そう言いながら 窓を開ける。また初夏の風に レースのカーテンがふわりとふくらむ。
主のいない部屋は 寂しげに片付いている。机の上には何もなく 本棚の背表紙は整いすぎて用済みのように見える。
シワひとつないほどきれいにメイクされたベッドを背もたれにして 並んでDVDを観る。
結局 お笑い系のものにしたのだが、 まっちゃんが 目尻の涙を拭きながら笑っているのに ひたすら緊張して 大輝も碧も 笑うことができない。
大輝が遠慮がちに手を伸ばして 碧の手をとる。両手で 碧の手を包んだのをみつめながら
「キスしていい?」
「きかなくてもいい」
碧の顔をみつめた大輝が笑った。
初めて 自分だけに向けられた輝くばかりの笑顔。胸がきゅうん、となる。この笑顔を手に入れるためだったら なんだってでき る、と思う。
乾いた唇が お互いの唾液でしっとりぬれ 歯がぶつかり合い おずおずと舌をからませたりして 息がとまるようなキスをした。
やっと唇をはなすと テレビから 笑い声がどっとおこった。
振り返った大輝が「だれもいないよ」と言う。どきり。また 緊張してしまう。
大輝が 居間の窓を開けると レースのカーテンが ふわりと風にゆらぐ。
「2階にいこっ」
大輝について2階に上がると
「兄貴の部屋にテレビがあるんだ。そこで いい?」
勝手がわからないので いいも悪いもない。
部屋に入るとき 「おじゃまします」と言うと
「兄貴は 社会人で 今は東京で一人暮らしをしてるから ここには めったに帰ってこないんだ」
そう言いながら 窓を開ける。また初夏の風に レースのカーテンがふわりとふくらむ。
主のいない部屋は 寂しげに片付いている。机の上には何もなく 本棚の背表紙は整いすぎて用済みのように見える。
シワひとつないほどきれいにメイクされたベッドを背もたれにして 並んでDVDを観る。
結局 お笑い系のものにしたのだが、 まっちゃんが 目尻の涙を拭きながら笑っているのに ひたすら緊張して 大輝も碧も 笑うことができない。
大輝が遠慮がちに手を伸ばして 碧の手をとる。両手で 碧の手を包んだのをみつめながら
「キスしていい?」
「きかなくてもいい」
碧の顔をみつめた大輝が笑った。
初めて 自分だけに向けられた輝くばかりの笑顔。胸がきゅうん、となる。この笑顔を手に入れるためだったら なんだってでき る、と思う。
乾いた唇が お互いの唾液でしっとりぬれ 歯がぶつかり合い おずおずと舌をからませたりして 息がとまるようなキスをした。
やっと唇をはなすと テレビから 笑い声がどっとおこった。