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あおい風 あかい風
第7章 電車

結月は 男のことをすっかり忘れていた。駅まで来て 「あっ」思い出した。
迷ったが あれから五時間以上たっている。もし 本当に待っているとしたら。
ため息をひとつ。わたしには関係ないのに。
無視できなくて カフェまで戻った。
驚いたことに 男は待っていた。窓際の席にひとり。外を見ている。反対方向から来た結月には気がつかなかったのだろう。
チェロを抱えた結月を見つけると ゆっくり立ち上がった。信じられないものをみたような顔をしている。
戻らなければよかった、と思った。
「ああ。いらっしゃい」と言い すぐに「今の へんだよね」と笑った。
また ため息。
結月の好みを聞かず アイスカフェラテをふたつ買ってきた。渡しながら 「これでよかった?」と聞く。
「一度 通り過ぎたでしょう? 脇目もふらず。戻ってきてくれたんだ」
自分でも困っている。戻らなければよかったと思っているのだ。
「ボクは 菅井佑介。名前 おしえて」
「戸渡結月」
「はじめまして。戸渡結月さん。これから よろしく」
なにが「よろしく」なのかわからない。自分で戻っておきながら 後悔していた。
ただ 今の佑介は 朝とは印象が随分違う。まじめで堅実な青年の雰囲気だ。
「K大の三年生。学生証みせるから」
「あっ。別に そこまで・・・」
「あやしいヤツと思われたくないんだ。はい。学生証」
確かにK大生のようだ。法学部とある。真面目な顔の写真。やっぱり 大輝に似ている。
長く見すぎたようだ。
「偽ものじゃあないから」 と佑介が笑いながら言う。
「戸渡結月さん。ボクにチャンスをください。一度 デートしませんか?」
「ここで待っている間に 色々プランを考えました。きっと好みのものがあるはずです」
迷ったが あれから五時間以上たっている。もし 本当に待っているとしたら。
ため息をひとつ。わたしには関係ないのに。
無視できなくて カフェまで戻った。
驚いたことに 男は待っていた。窓際の席にひとり。外を見ている。反対方向から来た結月には気がつかなかったのだろう。
チェロを抱えた結月を見つけると ゆっくり立ち上がった。信じられないものをみたような顔をしている。
戻らなければよかった、と思った。
「ああ。いらっしゃい」と言い すぐに「今の へんだよね」と笑った。
また ため息。
結月の好みを聞かず アイスカフェラテをふたつ買ってきた。渡しながら 「これでよかった?」と聞く。
「一度 通り過ぎたでしょう? 脇目もふらず。戻ってきてくれたんだ」
自分でも困っている。戻らなければよかったと思っているのだ。
「ボクは 菅井佑介。名前 おしえて」
「戸渡結月」
「はじめまして。戸渡結月さん。これから よろしく」
なにが「よろしく」なのかわからない。自分で戻っておきながら 後悔していた。
ただ 今の佑介は 朝とは印象が随分違う。まじめで堅実な青年の雰囲気だ。
「K大の三年生。学生証みせるから」
「あっ。別に そこまで・・・」
「あやしいヤツと思われたくないんだ。はい。学生証」
確かにK大生のようだ。法学部とある。真面目な顔の写真。やっぱり 大輝に似ている。
長く見すぎたようだ。
「偽ものじゃあないから」 と佑介が笑いながら言う。
「戸渡結月さん。ボクにチャンスをください。一度 デートしませんか?」
「ここで待っている間に 色々プランを考えました。きっと好みのものがあるはずです」

