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あおい風 あかい風
第8章 髪飾り
「はるにぃ」
今日 階段を降りてくる結月を見るまでは、 制服を着て 陽輝に向かって嬉しそうに手を振る少女だったのに。
背中のファスナーを下げ 大急ぎでワンピースを脱ぐと 飛びついてきた。
「一度だけ。今日だけ。一度だけでいい。抱いて」
「ゆうちゃん」
「だめって いわないで。抱いて」
振りほどこうとすると 白くて細い手が絡みついてくる。
「ゆうちゃん やめなさい」
「一度だけでいいから。最初で 最後に 抱いて」
「ゆうちゃん。おれには 結婚したいと思っている人がいるんだよ」
「わたしにだって 恋人がいるわ」
「ゆうちゃん」
「そんなことは どうだっていい。今日だけ、今日だけでいいから」
「ゆうちゃん。大事な人を 裏切ったり 傷つけたりしてはいけない」
「そんなの うそよ。みんな 裏切るし 傷つけても平気だわ。大輝だって 大輝だって」
涙というのは どれだけ あるのだろう。泣いても 泣いても 枯れることがない。
「ゆうちゃんは 今夜、ここに泊まるといい。おれは ホテルに泊まるから」
「そんなのいやだ。いかないで」
椅子の背にかけておいた上着を着た。
「あなたじゃないと だめなのに」
振り返らず「鍵は ドアポストに入れておいてくれればいい」と 靴箱の上に 鍵をおいた。
「はるにぃ いやぁ おいていかないで」
「はるにぃ ひとりにしないで」
ドアを出るとき 「ひとりは いやだぁ」という声を背中で聞いた。
今日 階段を降りてくる結月を見るまでは、 制服を着て 陽輝に向かって嬉しそうに手を振る少女だったのに。
背中のファスナーを下げ 大急ぎでワンピースを脱ぐと 飛びついてきた。
「一度だけ。今日だけ。一度だけでいい。抱いて」
「ゆうちゃん」
「だめって いわないで。抱いて」
振りほどこうとすると 白くて細い手が絡みついてくる。
「ゆうちゃん やめなさい」
「一度だけでいいから。最初で 最後に 抱いて」
「ゆうちゃん。おれには 結婚したいと思っている人がいるんだよ」
「わたしにだって 恋人がいるわ」
「ゆうちゃん」
「そんなことは どうだっていい。今日だけ、今日だけでいいから」
「ゆうちゃん。大事な人を 裏切ったり 傷つけたりしてはいけない」
「そんなの うそよ。みんな 裏切るし 傷つけても平気だわ。大輝だって 大輝だって」
涙というのは どれだけ あるのだろう。泣いても 泣いても 枯れることがない。
「ゆうちゃんは 今夜、ここに泊まるといい。おれは ホテルに泊まるから」
「そんなのいやだ。いかないで」
椅子の背にかけておいた上着を着た。
「あなたじゃないと だめなのに」
振り返らず「鍵は ドアポストに入れておいてくれればいい」と 靴箱の上に 鍵をおいた。
「はるにぃ いやぁ おいていかないで」
「はるにぃ ひとりにしないで」
ドアを出るとき 「ひとりは いやだぁ」という声を背中で聞いた。