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Memory of Night 2
第24章 姫橋祭

「失礼しまーす」

 夏休み中の職員室は、やはり普通に平日とは違っていた。教師も五、六人しかいないし、服装も私服に近い。
 倉木の席まで行くと、乱雑な机には栄養ドリンクやエネルギー補給用のゼリーが目に留まる。
 怠そうに頬杖をつき、ゼリーを口に咥えている。

「体調大丈夫?」

 声をかけるまで宵には気付かなかったらしく、驚いたように顔をあげる。

「はいこれ、プリント」
「あー、ありがとう。夏期講習に参加してるってことは、進路は決まった?」
「うん。先生が勧めてくれたとおり、大学行ってみようと思う」

 倉木はやつれた顔に笑みを浮かべる。

「いいと思う」

 グッと親指を立てる。

「学部とかなんも決めてねーけど」
「うーん、学部以前に文系か理系か決めないとね。それによって受験に必要な科目も違ってくるし、何を重点的に勉強するか絞るためにも早めに決めた方がいいね」
「相談したかったけど、先生いねーから」
「……ごめんよ。飲み屋で食べた生牡蠣が当たったみたいで。先生も君たち生徒のことが心配で夜しか眠れなかったわ」

 しかも退院してもしばらく禁酒だって、それが一番つらいわ、などとぼやきながら、倉木はわざとらしく腹を押さえてみせる。
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