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Memory of Night 2
第29章 桃華

「ごめん」

 唐突に亮は軽く頭を下げ、謝ってくる。

「無理に聞き出そうとしたわけじゃないよ。宵くんのご両親は……事故で、亡くなったって聞いてる。思い出したくなかったらいいよ」
「それも春加さんから? ……マジでなんでそんなことまで知ってんだろ」
「さあね。友人なのかな、君のお母さんと」

 友人……。強い引っかかりを覚えた。先ほどの春加の態度や表情は、とても親しい友人に対してのものとは思えなかった。好意的でないのは明らかだし、どちらかと言えば恨んででもいそうな表情(かお)だった。見下しているんだろう、と彼女は言ったが、宵の知る限り、桃華はそんなふうに人を見下したりなんかしない。
 宵は少し考えて、亮がくれた気遣いにこたえた。

「……さっきの話、別に大丈夫っすよ。こっちから振った話題だし」
「桃華さんのこと?」
「はい。母親っぽいエピソード全然ないけど」

 宵は苦笑した。
 亮は興味深げにもう一本タバコを咥えた。

「てか、バイト入んなくて平気ですか?」
「うん、外暇だしもう少し話してても大丈夫。」

 春加のことも気になりはしたが、亮はもう聞く体勢だった。
 くゆる紫煙を眺めながら、宵は改めて、桃華との日々を思い返した。
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