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Memory of Night 2
第29章 桃華

 宵の家では母が大黒柱だった。歳が一番上で、一番長い時間働き、たくさんお金を稼いでくる。もともとの横暴な性格も足され、桃華は家では絶対的な権力を持っていた。ありとあらゆる決定権はほぼ桃華にあった。その代わり、家事や学校のことはほぼ全て秋広がしてくれた。ご飯も、掃除も、洗濯も、授業参観や家庭訪問も、平日の学校行事はいつも秋広が来てくれた。
 不満はなかった。宵にとっては、小さい頃からそれが当たり前の形だったからだ。それに休日行われる運動会などの行事には、どれだけ前日仕事がハードだったとしても、桃華は来てくれた。公園や遊園地にも連れていってくれた。休日は三人で過ごすことが多かった。
 行き先はいつも桃華が決める。気まぐれに遠出させられたり、行き先を変更されたりも頻繁にあったが、秋広はいつも嬉しそうに桃華のあとをついていく。そんな平和な日常が普通だった。

「ーー仲のいい、ご家族だったんだね」

 ぽつぽつと浮かんでくるエピソードを亮に話すと、亮は口元を綻ばせながら呟いた。

「……それなりに、仲は良かったと思いますよ。つか、親父が母さんにゾッコンだったから、喧嘩にもなんないんすよね。端から見たら理不尽なこと言われてんのに、全部しょーがないなあ、で済ませちゃうような人だったから」
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