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Memory of Night 2
第37章 パンドラの箱
春加は虚ろに宵を見上げたままだった。
確かに全身のあらゆるところが痛かった。打撲か擦り傷か切り傷か、もうどこがどう痛いのかもよくわからない。脇腹の痛みだけは強烈で、もしかすると骨が折れてしまっているのかもしれない。
春加の体は、土壁にもたれるようにして座らされていた。膝の上には宵が羽織っていた上着が毛布のようにかけられている。
頭の中が揺れているみたいにぐらぐらした。
「……無理に喋んなくていーよ、そのまま寝てろ」
「おまえ……怪我は?」
「俺は平気。たいした怪我はしてないよ。……左足が、多分折れてるけど」
宵は壁を掘る作業をやめ、左足だけ伸ばしたまま、その場に腰を下ろした。春加とは数メートル離れて相向かいになる。
自然と春加の目線が下がり、光るペットボトルの正体がわかった。横にしたミネラルウォーターの下にライトをONにしてスマホを置いているのだ。暗闇の中で水が入ったペットボトルに懐中電灯を照らすと、光が周囲に広がりランタン代わりになる。
たまに災害対策でテレビで放送していた。それを応用したものらしいと、ゆっくりと理解した。
状況も、同じくゆっくりと理解する。宵と二人、洞穴の奥に閉じ込められているらしい。