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Memory of Night 2
第37章 パンドラの箱

 洞穴が崩壊したあの瞬間に、覚悟ができてしまったのかもしれない。
 冷たくて湿った土の匂いが充満する洞穴の中は、不思議と落ち着いた。

「……縁起でもないこと言うな。俺はやだよ、こんなとこで死ぬの」

 宵は春加のもたれかかっている壁に手をつき、立ち上がった。動くたびに足は痛むらしく、わずかな呻き声を洩らす。
 光るペットボトルを手に取り、その下のアメリアのスマホを持ち上げた。
 光が、洞窟の奥を照らし出す。

「崩れてないスペースは結構あるみたいだし、そんなすぐ酸欠にはなんねーよ、多分。……あんたが煙草我慢してくれりゃ何時間かもつだろ」
「……やだ」
「あっそ」

 宵はすでに潰した煙草の箱を握り直し、洞穴の奥へと思いきり投げてしまった。

「そんな吸いたきゃ、自分で探せ」

 春加は思わず、宵を睨み付けた。怪我で動けないことをわかっていて、わざわざ遠くに煙草を投げた。まるで犬におもちゃを投げるようなそのやり方につい腹が立った。
 桃華によく似たその顔に、いっそ石でも投げつけてやろうかと本気で思った。
 だがふいに、春加を見下ろす宵の表情が和らぐ。

「……やっとまともに俺の顔見たな。ずっと視線、合わせなかっただろ?」
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