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Memory of Night 2
第48章 すれ違いの行方

自分に言い聞かせるように、心の内でそう否定する。
だったらなんのためにここまで来てしまったのか、という話になるが、正直ちゃんとした理由はなかった。
浴室のドアを開けようとしたところで宵の手が止まる。
浴室から、微かに晃の息遣いが漏れていたのだ。
宵はその場で動けなくなった。抑えてはいるが、色っぽい息遣いは最中を連想させる。ただ体を洗っているだけで、そんな声にはならないはずだ。
宵はほんの数センチほど、浴室と脱衣所を隔てる磨りガラスを開けた。
ーー予想した通りの光景だった。
晃は浴槽に背をつけて座り、右手で自分のを慰めていた。ほどよく筋肉のついた裸体と、綺麗な横顔。濡れて頬を流れる茶の髪の隙間から、目を閉じたままわずかに眉間に皺を寄せ、一人での行為に集中している艶っぽい表情が垣間見れた。
エロい姿にドギマギしたが、それ以上にショックだった。
ーー自分がいるのに、なぜ一人で慰めてしまうのだろう。
ふいに晃が振り向いた。ドアの隙間から、脱衣所の冷気が流れてしまったせいだろうか。
晃は宵の姿に気付くなり、大きく茶色い瞳を見開いた。
「……っ」
目が合い、宵はとっさにその場を離れようと踵を返した。
だがその一瞬前に晃が勢いよくドアを開け、宵の左手首を掴まれてしまう。
「……!?」

