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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第1章 1皿目
片付けようとした矢先に、疲れきった声で「ただいまー」と玄関先から響いてくる。犯行現場の証拠隠滅を済ませてない殺人犯の様に、私はビクリと心身を跳ね上がらせ、せめて遺体だけは見られないようにとキッチンの引き戸を閉め、足早に玄関に向かう。
「お帰りなさい。今日もまた随分と忙しかったのね」
「あぁ。またしても部長に捕まっちゃってね。ちょっと一杯付き合ってきた」
「…もう。それだったら連絡してくれればいいのに。心配しちゃったじゃない…じゃあ、今日も食べてきたんだ?」
夫は「うん」と気だるげにぼやくと、罰が悪そうに私に背を向けてリビングへ向かう。時刻はまもなく19時を過ぎようとしている。飲み会の割には時間が短すぎるし、昨日も課長と一杯なんて言っては同じ時刻に戻ってきた。私を避けているのは明白だ。
「ねぇ…なんか焦げ臭い匂いしないか? 」
「えっ!? き、気のせいじゃ、ないかなーあはは」
「気のせいでこんな匂いする訳ないでしょ。また扉閉めて…家に匂い付いたらどうするんだよ、まったく」
そう言うやいなや洲捜査官はキッチンの引戸を開け放ち、凄惨な現場を白日の元に晒す。黒々とざらつく豚肉だったものを目の当たりにして、洲は顔をひきつらせる。隠し通さなければならぬ禁制区を暴かれてしまった私は愕然となり、夫の背後で膝から崩れ落ちる。
「なに? これ」
「…イジメル? DVしちゃう?」
「まずは返答をお聞かせ願おうか」
「…豚の生姜焼き」
瞬間、眉間にペチンと軽い爪の衝撃が走る。痛くはない。痛くはないが失敗したことによる刑罰には変わりないため、私は涙腺で抱えきれなくなった涙をポロポロとこぼし始める。
「お帰りなさい。今日もまた随分と忙しかったのね」
「あぁ。またしても部長に捕まっちゃってね。ちょっと一杯付き合ってきた」
「…もう。それだったら連絡してくれればいいのに。心配しちゃったじゃない…じゃあ、今日も食べてきたんだ?」
夫は「うん」と気だるげにぼやくと、罰が悪そうに私に背を向けてリビングへ向かう。時刻はまもなく19時を過ぎようとしている。飲み会の割には時間が短すぎるし、昨日も課長と一杯なんて言っては同じ時刻に戻ってきた。私を避けているのは明白だ。
「ねぇ…なんか焦げ臭い匂いしないか? 」
「えっ!? き、気のせいじゃ、ないかなーあはは」
「気のせいでこんな匂いする訳ないでしょ。また扉閉めて…家に匂い付いたらどうするんだよ、まったく」
そう言うやいなや洲捜査官はキッチンの引戸を開け放ち、凄惨な現場を白日の元に晒す。黒々とざらつく豚肉だったものを目の当たりにして、洲は顔をひきつらせる。隠し通さなければならぬ禁制区を暴かれてしまった私は愕然となり、夫の背後で膝から崩れ落ちる。
「なに? これ」
「…イジメル? DVしちゃう?」
「まずは返答をお聞かせ願おうか」
「…豚の生姜焼き」
瞬間、眉間にペチンと軽い爪の衝撃が走る。痛くはない。痛くはないが失敗したことによる刑罰には変わりないため、私は涙腺で抱えきれなくなった涙をポロポロとこぼし始める。